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第86話
いくらイイ雰囲気になったとは言え、他人様の前でキスしようとした恥かしさで、穴があったら飛び込みたい俺と、その反対にイケメン・スパダリ・オーラを撒き散らす翔は、楽しくて仕方がない風の松本氏と固い握手をして、店を後にした。
隙あらば腰に手を回そうとしたり、手を繋ごうとする翔をかわしながら、俺達は凛を迎えに行ったのだが、この時のイチャイチャぶりが後々あの事件を引き起こすとは、まだ気付いていなかったのだ。
「ねぇー、しょう、きょうは すごいごちそうね!
どうしたの?」
「じゃじゃじゃーーーん!
凛、これ見てくれよ!俺達の結婚指輪!」
翔が俺の手を引っ張り、光を放つ二人の薬指を凛に見せびらかした。
「今日は、指輪交換の記念日ということで…
翔様特製フレンチフルコースでございます。」
「きゃー!すてきーーー!やったぁーーーーー!!よかったね、さとし、しょう!」
まぁ、いいか…二人ともこんなにうれしそうだし…フルコースも楽しみだし…
ご機嫌な翔と凛を横目で見ながら、俺は黙々とフルコースを堪能した。
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