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第98話

翔はそんな喧騒をよそに、俺の髪の毛を撫で、泣き濡れた目元にキスを落としながら、器用にサバイバルナイフで俺の拘束を解いていった。 縛られていたところは、皮が擦りむけ血が流れ、殴られた頬は腫れ上がり、見た目も随分ひどい状態だった。 翔は、自由になった俺にそっと自分のジャケットを羽織らせギュッと抱きしめてささやいた。 「智、ごめん、俺のせいだ。 ひどい目に合わせてごめん、ごめんな。 お前が攫われたって聞いて、本当に気が狂うかと思った…」 「俺は…大丈夫だ…心配かけてごめん。 でも…翔、あんまり触らないで…あいつらになんか薬飲まされて身体が熱くて変なんだ…」 「ちっ、催淫剤か…智…辛いだろうが、ちょっとここで待ってろ。」 「あのーー、すみませーん。」 遠慮がちに声をかけられる。 「五十嵐さん、全員捕まえましたよ。」 「ああ、ありがとう。今行きます。 智、待ってろ、すぐに来るから。」 「うん。」たったひと言返して、震える手で布団を手繰り寄せその中に潜り込む。 それを見た翔は頷いて隣の部屋に移動した。

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