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第110話

俺の反応に満足したのか、翔は少し意地悪な顔をして、 「なぁ、智。あいつらにどこ触られた?」 ビクリと身体が硬直する。全身の血の気が引いた。 思い出したくない、忘れたい。 どうしてそんなことを聞くんだ? 俺のこと…許せない? やっぱり汚いと思ってるのか…? 恐怖と悲しみと困惑とが混じり合ってふるふる震えながら、瞬きもせず目を見開いて翔を見た。 涙が溢れてきて視界が霞んでいく。 翔が慌てて、零れ落ちた涙を親指で拭い、そっと手の平を頬に添えた。 体温を失った身体に、翔が触れている頬からじんわりと温もりが戻っていく。 「あっ、違うんだ!ごめん!泣かすつもりはなかったのに…ごめん… 嫉妬だよ!嫉妬! 俺の智に、俺以外のヤツが触ったかと思うと、守れなかった俺自身に腹が立って。 そこ、上書きしてマーキングしてやるって約束したじゃん。 だから… 思い出させてごめん!」 少しの沈黙の後、俺はぶるっと身震いすると、大きく息を吐いて言葉を絞り出した。 「あの日、会社を出てすぐにあいつらに声を掛けられたんだ。 『相沢智さんですよね』って。 油断した隙に首に手刀打たれて気を失って… 気が付いたら、あそこで両手両足縛られてて。

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