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第129話

そのうち帰ってくるだろう。安易に考えて、コーヒーを淹れにキッチンへ戻った。 1時間… 2時間…翔はまだ帰ってこない。 大人気なく怒りすぎたか…でもあいつも悪い。 ふざけていい時と悪い時があるだろう。 なんですぐ挿入しようとするんだ。ヤりたいのはわかる。俺だって男だから。 でも、受ける側は負担が大きいんだ。腰も足も関節も筋肉も(きし)んで動けなくなるんだよ。 なにもせず、お互いの鼓動と体温を感じながら、抱き合って眠ったっていいじゃないか。 淡白だと言うならそれも仕方がない。性欲なんて、人それぞれじゃないか。 あれこれ考えながら飲んでいたせいか、半分を残してすっかり冷めてしまった。 3時間……翔は戻ってくる気配もない。 さすがに俺もマズいと思い始めた。言い過ぎたし、無視したのも悪かったと思ってる。 冗談半分に甘えてたのも十分わかってる。 俺のこと、大事に思って愛してくれてるのも。 左手に目をやると、指輪が輝いていた。 二人の結び付きの証。 右手でそっとなぞってみた。 ガチャリ 玄関のドアが開く音がした。翔だ! リビングのドアに視線を向けると、黙って入ってくる翔と目が合った。 が… ふい と視線を逸らして、自分の部屋に戻っていってしまった。 え…翔に無視された…

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