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第147話
「…ごめん、翔。本当に今日は無理だ…俺から誘っといてごめん。
ごめん、わかってくれ…怖いんだ…」
目を伏せてふるふると震えながら智が謝ってくる。
ひょっとして、今の痛みでまた嫌な思い出がぶり返してるんじゃないか…マズい…
なにやってんだ、俺は…
もう、これ以上智を追い詰めることはできない。
昔のことを話すだけでも、勇気がいったことだろう。
俺の欲望のみの考えなしの行為のせいで、大切な恋人の心を傷付けてしまった。
「…俺のせいだ…智、ごめんな。
なあ、抱きしめられるのは怖くないか?
俺の匂いで、俺の温もりで、お前を満たして、なにも怖いものがないようにしてやるから、一緒に寝よう?」
こくんと頷いて哀しげな目でじっと見つめる智をそっと横たえた。
「…翔…ごめんなさい…」
震える小さな声が胸を打つ。
俺は智の首筋に左手を差し込むと、そのまま右手でそっと背中を引き寄せて、まだ震えている身体をぴったりと密着させた。
お互いの心臓の音が共鳴し合う。
「智、愛してる、心から愛してるよ。」
耳元でささやくと、「俺も…愛しています…」
智の声が身体中の細胞に染み渡っていく。
いつもの獣のような交わりと挿入のない、穏やかな触れ合いは、体温と呼吸を通してじわじわと身体を侵食して、心も身体も落ち着かせていく。
「ごめんなさい、翔、ごめんなさい…」
謝り続ける智の背中を撫でながら、俺は呪文のようにささやき続ける。
「智、ごめんな…愛してる、愛してるよ…」
そうして二人きりの静かな夜は更けていった。
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