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第148話
翌朝、俺が目を覚ますと、隣に居るはずの智の姿がなく、心臓がどきりとした。
手に触れるシーツは…冷たい。
「智?」
大きな声で呼びながら探すと、キッチンからトーストの焼ける匂いとコーヒーの香りがしてきた。
「翔?起きた?おはよう!」
智の明るい声が聞こえた。
「おはよう。お前、どうしたんだ?」
「毎日作ってもらってばかりだからさ、たまにはいいだろ?
ちょうど出来たとこだよ、さあ、食べよう。」
目は少し腫れているものの、元気な様子にホッとした。
でも…無理して笑っているのではないか?
「智…」抱きしめて唇にバード・キス。抵抗せずに受け入れてくれる。
が、すぐに両手を突っ張って身体を離し
「冷めちゃうよ?早く」
抱きしめるのをやんわりと拒まれた。
なぜか心にチクリと棘が刺さった。
小さな違和感が生まれたような気がした。
智を時々見つめながら朝食を済ませた。
「ご馳走さま、ありがとう、智。美味かったよ。
片付けは俺がするからいいよ。」
「そう?じゃあ、任せようかな。あ、でも一緒にしよう?」
結局俺達は一緒に洗い物を済ませて、リビングに戻ってきた。
座る位置も微妙に距離を取られているような気がする。
気になり始めたら、全てに違和感を感じてしまっている。
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