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第164話
とろんと半分閉じた目で、今にも寝落ちしそうな智の腰に足を巻きつけ、ぎゅうっと抱きしめると、智は花がこぼれるような笑顔で
「翔、愛してるよ」
とささやいて、意識を手放してしまった。
あー、このかわいい生き物は、どんだけ俺を翻弄してやまないのか…
身悶えしてキスをして、髪の毛をそっと撫でる。
静かな寝息を立てる智の顔を見ていると、幸せってこういうことなのか…という気持ちになってくる。
生まれてこのかた幸せとは無縁で、誰も頼る人もなく、突っ張って生きてきた。
たくさん傷ついたし、それ以上に他人も平気で傷つけた。
そしてそれが悪いことだとは思わなかった。
だから、この間のような事件に大切な人を巻き込んでしまうことになったのだが…
荒んだ俺に、智と凛という宝物が生まれた。
二人のお陰で、俺は人間らしい心を取り戻したような気がする。
なにがあっても、どんな目に遭っても、絶対に守り抜く。
俺の命に代えても。
性別を超えて、こんなにも愛おしく大切な存在。
5年後、10年後、俺達の関係はどうなっているんだろう。
きっと何年経ってもラブラブで、嫌がる智を抱きしめるんだろうな。
「んー、翔…もう、無理ぃ…むにゃ…」
ふっ、寝言かよ。夢でも俺に抱かれてんのか?
かわいいやつめ。
出演料もらうぞ。
俺はもう一度智にキスをすると、その温もりを愛おしみながら抱きしめて目を閉じた。
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