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第175話

電話の向こうでピキッと空気が凍る音が聞こえた。 「なんで?別に来なくていいじゃないか。 また明日、会社でな。」 「あーあー、ちょっと待って!せっかくマンションまで来てるんだからお茶でも飲ませてー! 入れてくれるまで携帯鳴らすよー!」 はぁっ…という大きな溜息が聞こえ、 「飲んだら五分以内に帰れよ。部屋は1601」 と同時にかちゃりと解錠される音がした。 やったー!よっしゃ!俺、最強! 自画自賛してエレベーターに乗りこんだら、「お帰りなさいませ。」という受付嬢の浮ついた声と共に、これまためっちゃイケメンが近付いてきた。 慌てて「開」ボタンを押し、待っていると 「ありがとうございます。」と低いセクシーな声。 いいえ と軽く会釈して階数を尋ねると俺と同じだった。 こんな男もいるんだな。いいニオイするし。 いかにも「オス」って感じだよな。 言い寄られたら俺でもフラッていきそうだよ。 そんな妄想をしつつ目的の階に着いて相沢の部屋へ向かう。 ん?着いてくるぞ。このイケメン隣の部屋? いや、違う。まさか… 「うちになにか御用でしょうか?」 えっ、うち? 「あの、えーっと、ここ相沢さんのお宅ですよね?」 「ええ、そうですが。うちになにか?」

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