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第182話
side:智
今日、どんな顔してあいつに会えばいいんだろう。
いや、普通通りでいい…
不安げな顔をしていたのか、翔がそっと俺を抱きしめる。
「智、大丈夫だよ。心配しないで行っておいで。
なにかあっても、お前ら二人ぐらい余裕で食わせていく自信たっぷりあるからな。
なんなら、主夫になってもいいぞ。」
笑いながらウインクされると、霧が晴れるように気持ちが凪いでいく。
「あはっ、それもいいかもな。考えとく。
ありがと、翔。大丈夫。行ってくるよ。」
「さーとーしーはやくー!りん、もういくよぉー」
凛の催促に慌てて靴を履く。
「しょう、いってらっしゃいのちゅーは?」
「はいよ。行ってらっしゃい。」ちゅー。
「智も。行ってらっしゃい。」ちゅー。
朝の恒例のちゅーも、もう恥かしくなくなってきた。
慣れとは恐ろしいもんだ。
「「いってきまーす」」
いつもの一日が始まる。
会社が近付くにつれ、胸がドキドキして緊張してきた。
大丈夫、大丈夫。
ドアを開けると…
机に突っ伏した秋山と峰。
手元には栄養ドリンク。
「おはよう。お前ら、どうしたんだ?」
「「ふーつーかーよーいー」」
「なんだよ綺麗にハモって。二人で飲んだのか?」
掠れた声の秋山が答える。
「うーん、途中までは覚えてるけど…後は記憶がない…
おまけになんかさぁ、どっかで転んだのか、腰もケツも痛いんだよな…
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