209 / 516

第209話

はやる気持ちを抑えて玄関まで辿り着いて、鍵を開けるのももどかしくドアを開けると、 「ただいまー!」 「翔!お帰り…うわぁっ!」 ドタッ 出迎えた智に抱きついて、二人ともそのまま倒れ込んだ。 「いってぇー…翔…なんだよっ。もうっ。」 俺は無言で智の胸に擦り付いて、ぎゅうぎゅう抱き締めたまま… そんな俺を不審に思ったのか 「おい、翔、どうしたんだよ。 なんかあったのか?」 声のトーンが少し落ちて、俺の頭を優しく撫でてくれる。 「もう、げんかんでなにやってんの? おへやにはいんなさいよ!」 頭上から凛の声がするが、俺はいやいやと首を横に振って智から離れない。 「翔…背中が痛いんだけど。せめてソファーに座らせてくれないかな…」 智の強請(ねだ)るような声に、俺はがばっと起き上がり、智を姫抱きにするとソファーまで運び、膝に跨らせて向かい合わせにすると、またぎゅーっと抱き締めた。 「翔…この甘えん坊め。 一体どうしたんだよ…なんか辛いことでもあったのか?」 「…違う。…俺、俺って本当に幸せだなぁって。 だから… お前も凛も、思いっきり幸せにしてやりたい…」 「…凛、凛もおいで。」 智は黙って見ていた凛を呼ぶと、俺と自分の間に隙間を作り、その中に凛を座らせた。 「翔がさ、俺達のこと、思いっきり幸せにしてくれるんだって!」

ともだちにシェアしよう!