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第227話
涙腺が決壊した。
今まで我慢していた何かが、ぷつりと切れたような気がした。
うえっ、うえっと嗚咽を繰り返し、俺は翔に縋り付いて子供のように泣いた。
こいつに縋り付いて泣くのは何度目なんだろう。
いい歳した大の男が大泣きしてるなんて。
こいつの前でしか…
それでも泣くのを止められない。
たった一人の男の大きな愛情にたっぷりと満たされて、俺の中にあった やるせない思い……諦め、悲観、戸惑い、傲慢、攻撃、非難…そういった負の感情が全て涙と共に流され、汚いドロドロしたものが消えていくのがわかった。
勝手に命を絶った親父や、後を追うように逝った母親を…
初めて許す心が生まれていた。
翔…ありがとう…
お前って、本当に凄いヤツだ…
お前と出会えて、俺は救われたんだ。
抱えてた闇に光が差し、少しずつ消えていった。
翔は俺が泣いている間、ずっと俺を抱いたまま、頭を撫で続けた。
時折頬を伝う涙を舌で舐めたり、キスをして…
こんなに心が荒れたのは、雨のせいだったのか、それともマリッジブルー的な鬱の感情のせいだったのか。
いや、もうそれは…
翔に愛されているという確信があるから…
思う存分泣いてもう涙も出なくなり、くったりと身体を預けていた俺は、少し翔から離れて、その顔を見つめた。
「ん?智、どうした?」
「翔、ありがとう。もう、大丈夫だから。」
「そうか…お前、もう少し寝てろ。
眠るまで側にいてやるから。」
ちゅっと リップ音を鳴らしてキスをすると、俺を横たえ、髪の毛を撫でてくれた。
その心地よさに身を委ね、俺はいつしか眠りについた。
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