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第229話
凛は今まで…霊安室でも、通夜でも葬式でも、ここの生活の中でも、声を上げて泣くことはなかった。
「哀」の感情が薄いのかとも思っていたが…
それが
俺に縋り付いて大声で泣いている。
凛の頭を撫でつつ、一旦凛の手を腰から外し膝立ちになると首に回させて、抱きしめた。
んぐっ、んぐっ と熱い息が俺の肩にかかる。
小さな愛おしい存在。
戸惑いながら翔を見ると、優しい瞳のまま無言で頷き、俺達を守るように抱きしめてきた。
翔は俺と凛の髪の毛にキスをすると
「お前、さっき具合悪かっただろ?
そん時の顔色がさ、亡くなった時の二人と同じで、凛は『さとしもしんでしまう』って思ったらしくて…
『さとし、いきてる?しんでない?』って不安そうに泣きそうな顔で何度も聞きにきてさ。
お前のこと、こんなにも思ってくれてるんだよ。
俺、凛が泣くのを初めて見た気がする。
なあ、こんな大切な宝物を任されたんだ。
絶対、お前達を幸せにするよ。
世間から見たら不思議な関係かもしれない。
けど、もう、家族以上の家族なんだ。
お前達の人生…俺に預けろ。
命懸けで守ってやる。」
「うん…うん…翔…お前に預ける。お願い…。
俺達二人分、丸ごと愛してくれよな?」
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