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第230話

「任せとけ!」 パチン とウインクを投げると、翔は嬉しそうに笑った。 凛は相変わらず泣き続け、俺にしがみついたまま離れなかった。 俺と両親の姿がダブって見えたんだろう。 かわいそうなことしてしまった。 でも やっと自分の感情を出すことができたのか。 凛は凛なりに生きる術として、一生懸命 俺達に溶け込もうとして、健気に気を張り詰めていたんだろう。 俺は自分のことで精一杯で、凛のことをきちんと見てやれてなかったのかもしれない。 「ごめんな、凛。ごめん…」 凛は、こくんと首を縦に振り、俺の首に回した手に力をこめた。 ふふっ、許してあげる ってことか。 「凛…翔が俺達を命懸けで守ってくれるから… もちろん、俺も。」 こくこくと頷いて、ようやく凛が顔を上げた。 「あはっ、美人が台無しだ。鼻かむぞ。おいで。」 涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった凛が愛おしい。 リビングで鼻をかみ、目も鼻も真っ赤にした凛は 「さとし…もうげんきになった?」 まだ俺のことを気にしている。 「ああ、もう大丈夫だよ。 だから予定通り、夕方出掛けよう。 翔、いいだろ?」 「もちろんさ!智の体調次第で…と思ってたから、まだキャンセルはしてなかったんだ。 ほら、智もメシ食って!」 翔に急かされて遅い昼食にありついた。

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