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第239話
三人ともハイな気分のまま帰宅すると、翔は早速晩飯の用意を始めた。
俺も凛も翔に餌付けされて、普通の外食を受け入れなくなっていた。
例えお茶漬けでもなんでも、翔の用意してくれるものしか食べたくないのだ。
「疲れてるのにごめん、俺も手伝うよ。」
「疲れてないけど…一緒にしてくれたらうれしいな。」
「りんも!りんもおてつだいするっ!」
「じゃあ、みんなで。今日は簡単に親子丼にしよう!」
翔は俺達にできることをそれぞれ指示し、あっという間に出来上がった。
親子丼にナスと麩の味噌汁、酢の物にレンコンのきんぴら。
あー、美味しい!
こうやって三人で囲める食卓は、平凡だけれど何よりも愛おしくて幸せを感じる。
以前は一人でも全く平気でそれが当たり前だったのに…
今日の、あの荘厳で美しい場所での俺達の姿を想像しながら、終始ぼんやりしている俺は、翔と凛に揶揄われた。
「さとしって、いがいと ろまんちすと なのねぇ。」
凛の言葉に真っ赤になった俺は
「乙女で悪かったなっ。」
と照れ隠しに一言呟いて、慌ててキッチンへ逃げ込んだ。
さーとーしー、かーわいいっ!かわいすぎるっ!
と悶え叫ぶ翔の声が聞こえたが無視して、ワザと がちゃがちゃ音を立てながら食器を片付けた。
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