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第252話

side:智 「はー、びっくりだよ、もう。」 「ん?なにが?どうした?」 俺の濡れた髪を わしゃわしゃと 拭いていた翔が手を止めて聞いてきた。 「実はさ…」 と、今日の出来事を伝えると、 「あの課長、只者じゃねーな。やるじゃん。 ショック療法に近いよな。 大丈夫だよ、智。 出張明けには、ちゃんと くっついてるよ、そいつら。」 「なんで?どーしてそんなことわかるの?」 「ん?スパダリのカンだよ。」 くっくっと面白そうに笑いながらドライヤーをかけ始めた。 えー、納得いかない。 あんなに毛嫌いされてるのに、どうしてくっつく? わからない… 『愛は…無償』 課長の言葉が蘇ってきた。 俺は…見返りを求めないで翔をちゃんと愛せてるのかな… なんだか溢れそうなくらい受け取るばかりで、何も渡せてないような気がする。 でも、好きで好きで堪らなくって、翔のためならなんでもできるし、命だって惜しくない。 髪が乾いてもじっと鏡越しに翔を見つめる俺に 「どうした、智?俺があまりにカッコよ過ぎて見惚れてたか?」 翔が真正面に回って顔を近付けてきた。 「俺さ、お前をちゃんと愛せてるのかな? 受け取ることばかりで、俺から何か渡せてるのかな?」

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