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*第266話

「仲居さんに心付けも渡したし、ひとっ風呂浴びてくっかなー。 あ、峰は俺が出てから行けよ。」 秋山は、そう言い残してとっとと大浴場に行ってしまった。 あー、そうですか、そうきましたか。 不貞腐れて畳に寝転がる。 せっかく二人っきりになったのに、この間の話もできず、すれ違っている心。 あー、課長…おれ、無理かも… 目一杯迷惑かけて、出張もぎ取ってきて下さっただろうに…すみません… この出張費、後で請求きたら恐ろしい金額になってそう… 分割にしてもらおうかな… せめて温泉で傷付いた心を癒して帰ろう… 「……ね、……みねっ、みねーーっ!!」 うーん、何だよ、うっせーな…人がいい気持ちで寝てんのによ… 「みね、みねっ、しっかりしろっ!!」 バシバシ叩かれてる… 「痛ってーなぁ……」 ガバッと起きたら、泣きそうな秋山の顔が目に入った。 「…ん?どーした?…」 「…お前……声掛けても起きないし…心不全かなんかで倒れたのかと……」 潤んだ目からぽろりと涙が落ちた。 ぼすっ 痛っ……ん?…抱きつかれてる? 「えっ、秋山……」 うっ、うっ、うえっ、うっ 秋山が泣いてる…うそっ…

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