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*第267話
「秋山…」
手を伸ばしてそっと肩に手を置いた。
一瞬びくっと身体を震わせたものの、嫌がるそぶりはない。
俺はそのまま秋山を抱き寄せた。
「ごめん、緊張が解けて寝落ちしてしまったんだ。
心配かけてごめん。」
「…ホントに…死んだかと思った…」
「だから、ごめんって。」
秋山が…俺の腕の中にいる…
あれだけ俺を拒否していた秋山が、大人しく俺に抱かれている。
風呂上がりの温もりが浴衣を通して伝わり、シャンプーの香りが鼻先を擽る。
「…秋山…俺…俺、入社式からずっとお前のこと」
ふいに目の前が遮られ柔らかい何かが唇に当たった。
???
それは、ちゅ という音を立てて離れていった。
キス?今の…キス?
「あ…秋山っ、俺、俺っ…」
「なあ、峰…この間の…本当か?」
「えっ?あ…うん、ごめん、迷惑だったよな。
俺….あんまり覚えてないけど。
でも、俺は入社式で初めて会った時から、お前に一目惚れだったんだ!
お前が誰のことを想ってようと…
好きだ、好きだ、好きなんだっ!!」
「…このヘタレっ!ばかっ!
俺を抱いといて…覚えてないってどういうことなんだよっ!
俺は…初めてだったのに…」
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