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*第268話
ぐっと胸が詰まる。
「えっ?…マジか…バージン?…ごめん…」
「女と違って血出ないからな…。
俺、散々相沢のことお前に愚痴ってきたよな。
お前、どんな気持ちで聞いてたんだ?
…あんだけバッサリ失恋したから、もう綺麗さっぱりあいつのことは未練も何にもなくなったけどな。
俺、今 お前が目の前からいなくなったら…って考えたら、心臓が止まりそうだった。
『人が死ぬ』っていうこと以前に、『お前がいなくなる』のが怖かった…
…本当に俺でいいのか?お前、ノンケだろ?
俺…男だぞ。
結構女にモテてるの自分で知ってんのか?
男の俺と付き合ったら、もう、後戻りできねーぞ。
親、泣くんじゃねーのか?
それに…
途中で『女と結婚する』って捨てられるのは…嫌だ…」
俺の胸元を握りしめて、秋山が一気にまくし立てる。
え…これって…告白…?
俺と付き合ってもいいってことだよな?
「秋山…
まず…ヘタレでごめん。
大事な初めての夜を覚えてなくてごめん。
お前が相沢のことを口にする度…正直辛かったし落ち込んだ。
でも、うれしそうなお前を見れたから、それでよかったんだ。
俺の気持ちは報われないってわかってたから。
男だろうが何だろうが、お前だから惹かれて好きになった。
お前のこと好きな時点で、もうノンケじゃないだろ。
俺は次男だから家を継ぐ必要もないし。あ、兄貴夫婦がちゃんとしてるから、ある意味俺はフリーなんだ。
それに…俺が捨てられても、俺がお前を捨てるなんてあり得ない。」
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