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*第269話
大きく深呼吸すると、今まで言いたくても言えなかった言葉を…
「秋山、お前が好きだ。
…結婚して下さい。」
俯いていた秋山がびっくりしたように顔を上げた。
瞬間体温が上がり、その目は大きく見開かれてじわりと潤んできた。
俺の目をじっと見つめると
「…もう一回言って…」
なんつー強請り方するんだ。
強烈にかわい過ぎる。
間近で見ると余計にその整った顔が際立つ。
綺麗だ…
「何度でも言うよ。
お前が好きだ。結婚して下さい。」
俺を見つめてこくりと頷いた秋山の目から、また涙が零れ落ちた。
その涙を親指でそっと拭うと、どちらからともなく自然と唇が寄って行き触れ合った。
優しいキス。
一旦離れて見つめ合った後、また唇を重ねた。
と、そこへ部屋の電話が鳴り響いた。
名残惜しげにちろりと唇を舐め、秋山の身体をそっと離し、受話器を取る。
「はい。」
「失礼致します。お食事の用意をさせて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ああ、はい。お願い致します。」
「食事の用意だって。
部屋で食えるんだ。贅沢だよな。
俺、その間に風呂に行ってくるわ。
秋山…
今夜は、俺、絶対忘れないから。」
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