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*第271話

あきさんが出て行き、秋山が聞いてきた。 「おい、峰、お前酒好きなんじゃないのか? 飲んでもいいんだぞ。」 「いや、今日は…一杯でいい。」 「ん?なんで?」 「なんでって…お前…空気読めよ。」 「…あっ……」 その言葉が何を意味するか分かったのだろう、秋山は、顔を真っ赤にして俯いてしまった。 うっ、かわいい。今夜は、絶対記憶を飛ばさないぞ。 なんたって、実質上の『初夜』みたいなもんだからな。 「今日を本当の初夜にするから…」 そう呟くと、秋山は耳まで真っ赤になった。 こいつ、こんなにしおらしくてかわいかったっけ? そうか、ツンデレだっ!ツンデレ!! 今まで『デレ』られたことが、ほぼなかったから… めっちゃ新鮮! 『ツン』もかわいくてそこも良かったんだけど… くーっ、このまま押し倒したいが、我慢だ、我慢。 「失礼致します。お飲み物お持ち致しました。」 「どうぞ」と答えると、すーっと襖が開いて、あきさんが入ってきた。 「あとは自分達で勝手にやります。 下げてもらう時に呼びますから、もう、結構ですよ。」 俺は『早く二人っきりにして』オーラを出して伝えた。 「そうですか…お料理のご説明を…あら、そうですか… では、こちら、お品書きでございます。 あ、こちら火を付けますね。 では、何かありましたらお申し付け下さいませ。 内線は9番でございます。 ごゆっくりどうぞ。 失礼致します。」 秋山は、俺とあきさんのやり取りを黙って聞いていたが、襖が閉まった瞬間、大きな息を吐いた。

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