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第303話

少し怒気を含んだ言葉に違和感を感じた。 翔? 貪るように唇を奪われる。 息をするのも惜しむように。 ちゅくちゅくと音を立て、口の中で翔の舌が縦横無尽に暴れまわる。 言葉にならない苛立ちが舌から伝わってくる。 何?何に苛立ってるの? 翔、そんなに我慢してた?俺のこと、欲しくて堪らない? いや、違う…そんなんじゃない。 戸惑いながら翔の激しいキスを受け止める。 やっと唇が離れて、お互いの息が上がっている。 身体を起こして翔が座り込む。 「翔…どうした?何かあった?」 「…なんでもない。」 「なんでもないって…隠し事はなしって決めただろ?それとも…俺には言えないことか?」 「違う…違うんだ。 結婚式の…式の打ち合わせの予約、今日の夕方にしてたのに、お前は人のことばっかりで、挙句に倒れる寸前まで仕事して… 土日もどこも出かけないなんて…お前、忘れてただろ?」 「…あ…ごめん…」 「俺にとっては、大切なことで…お前にとってもそうだと思ってたのに… …予約、キャンセルしよう。」 「待てよ!どうしてそうなるんだよ。 忘れてたのは謝る。俺が悪い。 一つのことに夢中になると、他のことに目がいかなくなっちゃうから。 ごめん、翔のこと蔑ろにしてたとか、そんなのではないんだ。 だから、許してくれないか?ごめん。」 顔を覗き込むと、翔の目が潤んでいた。

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