304 / 516

第304話

「翔…ごめん。忘れてた俺が悪かったから。 仲直り、して?」 翔の膝の上に乗って、目尻にキスをした。 瞬間、身体がひっくり返され、翔に跨がられていた。恨めしそうな目をして俺を見ている。 俺は手を伸ばして翔の首に回した。 「翔、許してくれないのか?」 翔は黙って啄ばむようなキスをしてきた。 それは…許すってこと? 大切なこと、忘れててごめん… 耳元でささやくと、途端にむしり取るように服を脱がされた。 明るい部屋の中で素っ裸にされ、羞恥で真っ赤になったが、翔がしたいようにさせてやろうと思った。 翔は自分の服も脱ぎ捨てると、俺に覆い被さってきた。 身体中(まさぐ)られ、赤い印を残される度にぴりりと痛みが走る。 『俺のものだ』『誰にも渡さない』 声にならない声が聞こえる。 そんなに追い詰めてしまっていたのか。 翔がこんなに楽しみにしていたことを忘れてるなんて。 俺の身体を這い回るように愛撫する翔の頭を抱きしめ、キスをする。 知らず知らず、俺の目からは涙が溢れていた。 「…智?」 それに気付いた翔がびっくりしたように、その行為を止めた。 「智…心の狭い男でごめん。俺、きっと寂しかったんだ。 俺だけが舞い上がって、俺だけが期待してるみたいで」 「違う!俺だって楽しみにしてたんだ。 でも…ごめん。理由はどうあれ、悪いのは俺なんだよ。翔、約束通り行こうよ。な?」

ともだちにシェアしよう!