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第306話
「出さずにイけたな…いい子。ご褒美あげるよ。」
堰き止めた指を外し、腰を掴んで激しく前後に突き上げると、俺は呆気なく白濁の液を吹き上げてイってしまった。
身体の中でまだ熱が燻っている。
何をされたのか、何が起こったのか、はっきりと理解できないまま、俺はヒクつく身体を翔に貫かれていた。
再び勃ち上がる俺自身を擦り、翔が容赦なく責め立てる。
「ああっ、あっ、あっあっ、あぁ」
俺の口からは喘ぎ声しか出てこない。
耳元では「愛してる」「好きだ」とうわ言のようにささやく声が聞こえる。
快楽に支配された身体がシーツの上で跳ねる。
そして
俺自身から放たれたものが翔の手を汚すのと同時に、翔の動きが止まり、灼熱の楔から大量の液が体内に出されるのを感じた。
愛するが故の行為の一つだと わかっていながら、なぜか性欲のはけ口にされたような、そんな思いが湧いてきて、ショックで俺は声を出さずに泣いていた。
心に穴が開いたようだった。
翔は俺の中から自分自身を取り出すと、いつものように『愛してる』とささやきキスをして身体を拭いてくれた。
俺が泣いているのは、初めてのあまりの快感にびっくりしたせいだと思っているらしい。
「智、いい子。よく頑張ったな。時間になったら起こすから。」
頭を撫でて部屋を出て行った。
違う、そうじゃない!叫びたくても声が出ない。
どうして?
打ちひしがれた心のまま俺はフェイドアウトしていった。
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