309 / 516
第309話
黙って俺の話を聞いていた遥さんは
「うちの隼人と一緒だね。
独占欲が強くて尊大で、意地っ張りで、ワガママで甘えん坊で。
でも、誰よりもあなたを信じて愛してくれてる。
これ、見てよ。」
そう言いながら、遥さんが左手のカフスを外して袖口を捲った。
そこには、赤く何かで擦ったような跡があった。
訝しげに目で問う俺に
「うちも夕べ、ちょっとしたことで食い違って、腹を立てた隼人に両手首縛られて、無理矢理されちゃったんだ。
こんな目に遭わされて男としてのプライドはボロボロになるし、悔しくって、頭にきて…
無理矢理って、やだよね。
嫌なんだけど、『そこまで想われてるのか』って逆に喜んでる自分がいて…そのアンバランスに心がついていかなくって…
でも、隼人にしたら、それも愛情表現の一つだって言うんだよ。
私も男だからわかるけど、征服したい、虐めたい、堕としたい…っていうオスとしての本能というのか…それが時々爆発するみたいなんだよね。
逆に私も隼人のことを滅茶苦茶に啼かしてやりたいって、そうすることもあるし。
性癖の好みの問題もあるよね。
『ここまではオッケー、これ以上はノー』っていうラインを今まで散々話をしてるし、私達のようにもう年月が経ってると、阿吽の呼吸でわかるんだけど、あなた達はまだ若いし、付き合い始めたばかりでしょう?
カラダだけじゃなくって、言葉のコミュニケーションも、とても大切だと思うよ。」
遥さんが愛おしそうに手首を撫でながら、ふうっと溜息をついた。
ともだちにシェアしよう!