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第310話

「…なんか、モノ扱いというか、ただの性欲処理に使われたみたいで… 俺が…乱れていくのを笑って見られてて… 俺って、身体だけの存在なのかって思ったら、悲しくなって…」 握りしめた手の甲にぽろりと涙が落ちた。 遥さんがそっとティッシュを差し出してくれた。 「…ありがとうございます…」 「智君…五十嵐君ね、あれから何度も何度も電話やメールくれてるんだよ。」 「…?」 「結婚式の打ち合わせの事前準備の。 あなたがすごく感激してくれたステンドグラスに夕陽が差し込むあの時間…挙式予定日の日の入りの時間とか、照明の色や明るさとか、祭壇の花の種類とか…ものすごく詳細に。 隼人といつも話してるんだ。 智君が本当に喜ぶことをしようっていう想いがすごいねって。 彼、言ってたよね。 『私達の一生宝物になる、その日のことを思い出したら迷うことなく前に進んでいける、そんな式にしたいんです。』 って。 あの言葉に嘘偽りはないと思うよ。」 「…そうなんですか…翔が…」 「ねぇ、智君…ちょっと突っ込んで聞くけど、 昨日、その行為の最中、黙ってされてた?彼はただ笑ってただけ?」 俺は必死で記憶を辿って… 「時々『愛してる』『好きだ』って言った…」 「きっと、それが本心だよ。 隼人もさ、ドSなんだけど、うまく愛情表現ができなくて、好きな子を虐める小学生みたいなやり方で愛してくることがあるんだ。 『お前の顔が被虐心を煽るんだ』って。 五十嵐君、あなたに微妙に距離を取られて、どうしてなのか、どうしたらいいのか戸惑ってる。 その原因が昨日の行為のせいなんて分かってないと思うよ。」

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