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第312話

じゃあ、行こうか と遥さんに促されて、翔がいる衣装部屋へと向かう。 俺達が入ってきたのに気付いた翔は、縋るようなどこか不安げな顔をしていた。 「明日午前中に新作が届くんだって。遥さんが連絡くださるから、それを見て決めようと思う。」 翔にそう告げると、ホッとしたような顔をして 「俺もさっき隼人さんから聞いてそうしようと思ってたんだ。 凛は…どうやら決まったみたいだぞ。」 遠藤さんが俺たちを呼びに来た。 「凛ちゃんのドレス、決まりましたよ! 試着済ませてますのでご覧いただけますか?」 「ねぇ、ねぇ、さとし、しょう、みてー!!」 試着室の鏡の前でご満悦の凛がくるりと回ってみせた。 薄いピンクのサテンをベースにオーガンジーのフリルを纏い、布の花で縁取られた愛らしいドレス。 髪には同じ素材のカチューシャ風のリボンが結ばれている。 凛にぴったりだ。 「おおっ、凛、お姫様みたいだっ! 俺達主役を食っちまいそうだな。」 「凛、すっげーかわいいぞ。 遠藤さん、ありがとうございます!」 「いいえ!お好みのドレスが見つかってよかったです。ふふっ。たくさん悩みましたね。 凛ちゃん、すごく素敵ですよ!」 「うふっ、ありがとうございます!」 凛はお礼を言って優雅に膝を折ってみせた。 俺達は、明日の連絡を待ってまた訪問する旨を伝え、厚く謝して式場を後にした。

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