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第313話

「遥、ありがとう。よく気が付いてくれたね。」 「どういたしまして。今日、お会いした瞬間のあの距離感が気になって。 あのまま衣装を決めても、ギクシャクしたまま当日不満と不安が残るだけだから。 五十嵐さんも平気なフリして不安そうな顔してたしね。」 「さすが俺のパートナーだな。」 「お褒めいただき恐悦至極。」 「…夕べはごめん…」 「…わかってるから…」 「…愛してるよ」 重なり合い一つになった影を窓越しの月が優しく照らしていた。 凛は終始ご機嫌で、なんかよくわからない即興曲を歌っていた。 りんの~どれすはぁー ぴんくでぇ~ りんは~かわいい~おひめーさまぁ~ 「おい…凛…似合ってたのも認めるし、確かにかわいかった。 でもなぁ、主役は『お・れ・た・ち』だからなっ!」 翔が呆れて釘をさすように凛に言うと 「わかってるもーん。」 にひひと思い出し笑いが止まらない凛に、俺達のおまけで写真撮ってやるから…と翔がチョッカイをかけている。 そんなやり取りを聞きながら、俺は遥さんの言葉を思い出しながらぼんやり窓の外を眺めていた。

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