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第330話
昼前に遙さんから電話があった。衣装が届いたので、15時以降ならいつでもどうぞと。
その日の夕方、ご機嫌な凛を連れてまた足を運ぶ。
「お待たせしました!準備できてますのでどうぞ!」
隼人さんに案内されて衣装部屋へ向かう途中、遙さんにこっそりと耳打ちされた。
「仲直りされたんですね、よかった。」
ぶわっと全身火を吹きそうになり、真っ赤になった俺の肩をポンと叩いて、遙さんがにっこり微笑んだ。
「はい、お陰様で…ありがとうございました…」
しどろもどろに小さな声で答えるのが精一杯。
「こちらが今日届いた分です。
一応ね、あなた達をイメージして仕入れてみたものもあるんです…
お気に召したものがあればよいのですが…
もしよかったら、袖を通してみて下さい。」
ポールハンガーに10着ほどかけられた白の礼服。
俺達は二人とも白にしようと決めていたのだ。
あ…これ、しっくりする…
シンプルなデザインのフロックコート。
本当は黒が正式らしいけど、俺は、一目で気に入った。
翔は?
すぐに好みの一着を探し出していた。
胸元に手の込んだ刺繍の入ったタキシードだった。
「では、試着室へどうぞ。」
遙さんに案内されて個々に個室のカーテンの中へ。
「お手伝いしなくても大丈夫ですか?」
「はっ、はい!自分でできますっ!大丈夫です!」
手伝われたら俺が困る。身体中赤い斑点だらけだから…
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