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第333話
昨日とは打って変わって穏やかな気持ちで家に着いた。
俺ってなんて単純なんだろう。
翔の言葉に、態度に、纏う空気に…その一つ一つに踊らされて煽られて…
何をされても何を言われても、全てを受け入れる覚悟みたいなものがだんだん大きくなって。
あのヤンチャな、それでいてサイコーに男前なあいつには、敵わない。
きっとそれは、魂のレベルであいつを愛してしまっているからなのかな…
出会って間もない…それも衝撃的な出会いの俺達が凛を育てるために同居を始め、男同士で肌を重ねて、結婚まで辿り着くなんて、普通じゃない。
恋愛のプロセスも、あったもんじゃない。
でも
毎日あいつに恋をしている。
好きで、好きで、どうしようもないくらいに恋い焦がれてる。
確かに今まで疑似的恋愛はあったと思う。
かつて結婚した女も一度は幸せにしてやろうとは思った。
けれども、本気ではなかった。
結局、そういうことなんだ。
あいつのためなら、この身を差し出しても、命を賭けてもいいとさえ思う。
どんなことでもできる。
そういう相手に出会ったことが…出会えたのは奇跡だ。
「智?ぼんやりしてどうしたんだ?
食事中も風呂の後もずっと、心ここに在らず って感じだけど。
何か気になることでもある?」
片付けを全部済ませた翔が、抱きしめてきた。
「ううん。俺ってお前のこと大好きなんだなーって思ってただけ。」
「くっそかわいいこと言いやがって。
じゃあ、大好きな俺が抱いててやるから、朝までゆっくり寝よう。」
そのまま寝室に連れて行かれて、濃厚なキスを落とされ『愛してる』のささやきを心地よく聞きながら、深い眠りについた。
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