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第338話
ぐしっぐしっ と泣きじゃくる悠真に
「…背中濡れるし離れろ。」
「……………………………」
無言でぎゅうぎゅう力を込めて抱きしめて反抗される。
「ウザい、キモい、離れろ。それと苦しい。」
ちょっと力が弱まった。
ふうっと大きな溜息をついて
「…もう二度と俺達のこと喋るなよ。」
背中に張り付いた頭が上下に動くところをみると、『わかった』とでも言ってるんだろう。
くるりと反転して、涙と鼻水ででドロドロになった悠真の頬を両側から むにー っと引っ張って、
「ばーか。泣くなよ。」
ぐえっ
力一杯抱きしめられる。
あぁあぁ…俺のシャツ、悠真の涙と鼻水でドロドロだ。肩が…冷たい。
「おい、明日お前のシャツ貸せよ。お前の鼻水と涙でぐちゃぐちゃじゃん。洗濯しろよ。ばーか。」
悠真は右手だけ横を探るようにしてティッシュを取ると、片手で鼻をかんで涙を拭いている。
もう片方はしっかり俺の腰を抱きかかえている。
器用なやつだな。俺が逃げたりしないように確保してる訳か。
なんか…かわいい。『かわいい』と思う時点で俺はもうヤラレテイル。頭おかしいかも。
仕方ないよな、こいつのこと好きなんだもん。
絶対言ってやらないけどな。
もうちょっと虐めてやるか…いや、やめとこう。
今夜は泣かせた分、少しは甘えさせてやるか。
「おい、ネクタイも貸せよ。
それと…一緒に風呂入るぞ。下着も貸せよな。」
駄犬がパッと顔を上げて、噛み付くようにキスされた。喜びのあまり振り過ぎてちぎれた尻尾がどこかへ飛んで行ったのが、目の端に見えた…
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