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第340話
かちゃり パタン
遠慮がちに玄関のドアが開く音がした。
翔だっ!
俺は玄関まで飛んで行った。
「翔、お帰り!」
ん?何か顔色悪い?
「翔、どこか具合悪いのか?顔色良くないぞ。」
「んー?あぁ、ちょっとな。風邪引いたみたいだ。
大丈夫だよ。心配すんな。」
「ご飯は?」
「食欲なかったから食ってない。」
「とにかく着替えて、すぐベッドに!」
ふらつく翔を支えると、洋服越しにいつもより高い体温が伝わってきた。
洗面器にお湯を入れたものを持ってきて、ザッと全身を拭いてやり、すぐに着替えさせて布団に押し込んだ。
体温は…38.4度。
「よくこんなんで仕事に行ったな…」
「なんかふわふわするって思ってたんだ…」
常備している経口補水液を飲ませ、腋の下を冷やしてやる。
「何か口に入れとかなきゃ。おかゆ食べる?」
「お前を食べたい。」
「あーん?そんなこと言えるんならまだ大丈夫だな。
いい子にしてろよ、翔。」
急いでおかゆを作って、翔の枕元に座った。
顔が赤くて、息も熱い。
「ちょっと起きれる?おかゆ作ってみたんだけど、食べれる?」
「…うん。一口もらう。」
背中にクッションをかませて座らせて、スプーンでひと匙すくってふーふーして冷ましたものを翔の口元へ運んでやった。
「ん…美味しい。」
「もうちょっと食べれる?」
またふーふーして口元へ。
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