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第344話

凛と入れ替わりに智が朝ご飯を運んで来てくれた。 ほかほか出来立てのおかゆだ。 「どうだ?食べれるか?起きれる? 少し具合良くなってるみたいだから、ささみと卵入れてきたよ。」 「ありがとう。大丈夫だよ。ごめんな、朝忙しいのに。」 「ううん、いつもしてもらってるからさ、こんな時ぐらい役に立たなきゃ。 あ、お昼は一応、弁当詰めたけど、食べれなかったらそのまま置いといて。 おかゆはお昼の分も作ってるよ。 早退出来たら帰ってくるけど、多分無理かな… 晩メシは俺が作るから、いい子で寝てるんだぞ。」 そう言って鼻先に ちゅっ とキスをして 「早く元気になって…なんかあったら、すぐ電話して。」 と頭を撫でてくれた。 すりすりとその手に擦り寄って甘えた。 「もう、大丈夫だから。」 「…うん。片付けてくるね。」 かちゃりとドアを閉めて智が出て行った。 湯気の立ったおかゆは、智の愛がたっぷり詰まっている。 ごそごそと起き出して、冷ましてから一口。 美味い… あっという間に平らげた。 お腹も心も満たされて、また布団に潜り込む。 昔から具合が悪くても、母親は看病してはくれなかった。ひたすらずっと一人で寝ていた。 それに慣れていただけに、夕べ智に甲斐甲斐しく世話を焼かれて、どうしていいかわからなかったのは事実だ。 今も、自分だって出勤しなければならないのに、その時間を割いて俺の面倒を看てくれてる。 サイコーの出来た嫁だよな…と思ってるうちに、だんだん瞼が落ちてきて、ふっと意識が途切れた。

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