353 / 516

第355話

なんとなく悶々としたまま業務を終え、夜にホッと一息ついた頃、翔がワインとつまみを持ってきてくれた。 「おっ!今日は飲みたい気分だったんだよ。 翔、なんでわかったの?」 「お前のことならなんでもわかるよ。 愛してるからな。」 ふふんと得意気に笑うと、俺の隣に腰を掛けた。 いとも簡単にワインのコルクを開け、優雅にグラスに注いでくれる。 一口飲んで味わった後、一気に流し込む。 「おかわりっ!」 「智…なんちゅう飲み方すんの?もっと味わって飲んでよっ。もうっ…一応、お高いワインなんだけど。」 文句を言いながらも、とくとくっとグラスを満たしてくれた。 シラフではちょっと聞きにくい。俺は二杯目も、ぐいっと飲み干した。 「お前さ…いっつも俺のこと『かわいすぎて啼かせたい』とか『好きすぎて堪んない』とか言うけどさ…それってどうなの?」 「『どうなの?』って…どういう、意味?」 「オスとしての本能でそうなのか…それともまた違う感情なのか…」 「なに訳わかんないこと言ってんの? また…なんか変な情報仕入れてきたのか? (きっと瑞季君絡みだろ。近いうちに日向と応相談だな。) 俺は、お前のこと心から愛してる。 だから、お前の喜ぶ顔やうれしい顔見たいし、それだけじゃなくて、辛い時や悲しい時の負の感情も俺にぶつけてほしい。 上っ面だけじゃなくて、素のままのお前を感じたい。肌を合わせて愛し合いたい。毎日な。 『オスの本能』っていうのも、あながち間違いではないと思う。愛しいもののために闘って守り抜くってのは、そうだと思う。それと、支配欲とか征服欲とか。 お前だってそんな気持ち、わかるんじゃないのか?」

ともだちにシェアしよう!