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第355話
なんとなく悶々としたまま業務を終え、夜にホッと一息ついた頃、翔がワインとつまみを持ってきてくれた。
「おっ!今日は飲みたい気分だったんだよ。
翔、なんでわかったの?」
「お前のことならなんでもわかるよ。
愛してるからな。」
ふふんと得意気に笑うと、俺の隣に腰を掛けた。
いとも簡単にワインのコルクを開け、優雅にグラスに注いでくれる。
一口飲んで味わった後、一気に流し込む。
「おかわりっ!」
「智…なんちゅう飲み方すんの?もっと味わって飲んでよっ。もうっ…一応、お高いワインなんだけど。」
文句を言いながらも、とくとくっとグラスを満たしてくれた。
シラフではちょっと聞きにくい。俺は二杯目も、ぐいっと飲み干した。
「お前さ…いっつも俺のこと『かわいすぎて啼かせたい』とか『好きすぎて堪んない』とか言うけどさ…それってどうなの?」
「『どうなの?』って…どういう、意味?」
「オスとしての本能でそうなのか…それともまた違う感情なのか…」
「なに訳わかんないこと言ってんの?
また…なんか変な情報仕入れてきたのか?
(きっと瑞季君絡みだろ。近いうちに日向と応相談だな。)
俺は、お前のこと心から愛してる。
だから、お前の喜ぶ顔やうれしい顔見たいし、それだけじゃなくて、辛い時や悲しい時の負の感情も俺にぶつけてほしい。
上っ面だけじゃなくて、素のままのお前を感じたい。肌を合わせて愛し合いたい。毎日な。
『オスの本能』っていうのも、あながち間違いではないと思う。愛しいもののために闘って守り抜くってのは、そうだと思う。それと、支配欲とか征服欲とか。
お前だってそんな気持ち、わかるんじゃないのか?」
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