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第366話

そうこう言っているうちに峰が合流した。 さっきの秋山を思い出して、峰の顔を直視できない。峰、お前もちょっと考えてヤれよっ。 「あのね、二人に聞いてもらいたかったのは… 僕、昨日退職届を出したんだ。」 「「えーーーーーっ!?なんでぇ?????」」 「義母(はは)…日向のお母さんの具合が思わしくないんだ… 義父(ちち)もセーブしてるとはいえ、仕事をしてるし、弟の朝陽君も家を出てしまっているし、ギリギリまで家にいたいっていう希望で自宅療養してるんだけど、一人だと心配だし、日中誰か一緒の方が、家族みんな安心でしょ? 誰もいない間に倒れてたら…って思ったら、居ても立っても居られなくって。 僕は涼香ママ…あ、高校の時からそういうあだ名で呼んでるんだけど…のお陰で日向と一緒になれたんだ。 恩人でもあり親よりも親っていうか、僕にとっては、とても大切な人なんだ。 その大切な人のために、残りの時間を使いたいってずっと思ってて。 病気がわかってから、日向には内緒でヘルパーの資格も取ったんだ。 ここの仕事はもちろん僕にとっては大事で、峰君や智君、片岡課長にまーちゃん課長、庶務のみんなに、すごくよくしてもらってて、きっともう、ここ以上の職場はないと思う。 でも、中途半端なことはできないから、思い切って退職することにしたんだ。 僕の結婚相手が男だってバレた時に、庇って助けてくれたみんなにお返しもできないままなんだけど。」 一気に自分の思いを話し終わった瑞季君は、ふうっと大きく息をついた。

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