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第380話

しばらくしたらこの温もりが遠くに行っちゃうのか。一人で寝るにはこのベッドは広すぎるし冷たい。 朝、目覚めた時に片側だけピンと張ったままのシーツを(まさぐ)って、翔がいないのを確認しなくちゃいけないのか… 一人で…俺、耐えれるかな… あ、ヤバい。 『あの』気持ちが落ちていく感覚がする。身体が震えだした。 俺は思わず翔にしがみ付いた。 「智?」 俺の様子がおかしいのに気付いた翔が 「智?ひょっとして『落ち』かけてる?」 そう言うと俺を抱え直して優しく身体を摩り始めた。 「ごめん、大丈夫だから。俺は絶対戻ってくるから。心配しないで…愛してるよ、智… 急に…ごめんね。 前日になるけど、絶対、絶対戻るから。 毎日電話する。時差があるけど必ず電話するから。 愛してるよ、愛してる。」 耳元でささやかれ、抱きしめられて、やっと身体の震えが治まってきた。 大きく深呼吸すると、翔のフレグランスと体臭が混じり合った、俺の大好きな匂いが肺の中一杯に入ってきた。 あぁ、大好き… うっとりと夢見心地で深呼吸を繰り返す俺を抱きしめたまま、翔は頭を撫でてくれている。 気が付くと、真っ裸で抱き合っていて、こいつの手の早さに呆れながら、それでも直に触れる肌の心地良さに心溺れて、俺の意識はなくなっていった。

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