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第387話
その男の言う通りにナンバーを探し出してコールする。
一回…二回…三回…
「はい、奥田。無事帰宅されたか?」
「…本人ですけど。」
電話の向こうの相手が息を飲むのが感じ取れた。
「本人?あの…うちの社員は…」
黙ってそいつの顔に携帯を押し当てる。
「部長…申し訳ありません。尾行に気付かれて確保されています。」
「はっ?瀬川、どういうことだ?」
「相沢ですけど、詳細教えていただけませんか?
俺は納得いかない。護衛される覚えもないので。
今、◯丁目△番地の居酒屋の横の路地にいます。
どこに行けばいいですか?それともそちらから来られますか?」
「私共がすぐに参ります。少々お時間下さい。」
気まずい空気の中、瀬川と呼ばれた男を拘束したまま口を利かない。彼は諦めたのか逃げる気配もない。
五分程でワンボックスカーが現れた。
中から出てきたのは、180センチ位はあるだろうか、すらりとした体躯でなかなかの渋めのイケメン。
「奥田と申します。この度は大変なご迷惑をおかけしまして、申し訳ありませんでした。」
差し出された名刺には、大手警備会社名と、部長 奥田慎太郎 という肩書きがあった。
うつ伏せで両手首を拘束された部下を見て、ため息を一つついた奥田氏は
「これはあなたが?」
「ええ。俺と凛とで。」
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