398 / 516
第400話
「お帰りの時は、私がお送りします。
外でお待ちしてますので、お声をかけて下さい。」
一礼して中谷氏とドクターが出て行った。
「…なんでそんなことになったのか、佐々木さんっていう秘書さんから聞いたよ。
あんまり幸せそうで揶揄ってやりたかったって。
羨ましかったんだって。
ちょっとしたイタズラのつもりだったって。
だから、翔のせいじゃないから。
お前が事故ったんじゃなくてよかった…
無事に帰ってきてくれてよかった。
それに、お医者様ももう大丈夫って…
おい、泣くなよ、翔…俺、本当に大丈夫だから。」
涙が溢れて止まらない。
自分の不甲斐なさと、大切な伴侶と娘を傷付けられた怒りと、いろんなことに対するやるせなさとで…
情けない。大切な人達を守れないなんて。
俺は智の頭に自分の頭をくっ付けて、声を殺して男泣きに泣いた。
その間、智はずっと俺の頭を撫でてくれていた。
凛がそっと抱きついてきた。
しばらく泣いた後、智を見ると、薄っすらと涙を浮かべていた。
とてつもなくキレイで見惚れていると、頬をむにむにと摘まれた。
「早く帰ろう。お前の顔見たら元気になってきた。お腹すいたよ。なぁ、凛。ごめんな。
遅くなっちゃったけど、帰って手巻き寿司食おーぜ。」
こくこくと頷いて、そっと…キスをした。
ともだちにシェアしよう!