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第408話

そばにいる佐々木や高橋までもが顔面蒼白になって硬直していた。 「結婚式直前の五十嵐君をこちらの都合で無理矢理連れて行って、ただでさえ不安に思って待っているフィアンセに、何という心ない行動が取れるんだよっ。 それに伝えてあったよな? 彼らの妹と弟が交通事故で亡くなって、そのお子さんを引き取っているのを。 『五十嵐君が交通事故に遭った』だと? よりによって何でそんなことを平気で口に出せるんだ? 倒れて息をしてないその現場に、五歳の女の子がたった一人で居合わせて、健気にも救急車が来るまで泣きながら人工呼吸してたんだぞ? 俺は、あの時携帯から聞こえたあの子の悲鳴と泣き声が、今でも耳について離れない。 お前ら…人間か?それとも人間の皮を被った獣か? 学校で、社会に出て、何を学んできた? 単なるイタズラ?揶揄い? ふざけんな!お前らのやったことは立派な犯罪だっ! 今までは何かあっても『お父様方』に庇ってもらって尻拭いしてもらってたんだろ? 俺が何も知らないと思ってんのか? 悪いな、全部知ってるよ。 今回はそうはいかない。親のご威光は通用しないぞ。 お前達は、本当に人を愛したことがないからそんなことが平気でできるんだ。 一度でも真剣な恋愛をしたことがある人間なら絶対そんな酷いことはできないはずだ。」

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