408 / 516
第410話
side:翔
長い…長い一週間だった。
挙げ句の果てにこんな結末が待っているなんて、誰が予想する?
愛しい大切な男 が命を落としかけたなんて。
座っておけと言っても言うことを聞かず、キッチンをくるくると動き回る智は、さっきまで救急車に運ばれて点滴を受けていたとは思えない。
ぐっすり眠っていたはずの凛も目を覚まして手伝っている。
「さあ、できたよ!ずいぶんと遅くなってしまったけど…翔、お帰り!」
「おかえり!しょう!!」
「ただいま。とにかく…無事でよかった…」
「…うん、ごめん。もう、大丈夫だから。
凛もありがとうな。」
「…うん。りん、おなかすいたよぉー!」
「じゃあ、みんなで…」
「「「いただきますっ!」」」
何気ない振る舞い、空気、会話…この当たり前がすべて愛おしい。
智を失うかと思った時、冗談ではなく回りの景色が、音が消えた。
俺の全ては智なんだと、確信した。いなくなるなんて考えられない。俺の命に代えても惜しくない存在。こいつがいなくなるくらいなら俺も一緒に…
「…翔…翔?どうした?疲れたよな?」
「あ…ううん。大丈夫だ。お前が無事で本当によかった。
凛…お前もよく頑張ったな。本当にありがとう。」
ともだちにシェアしよう!