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第410話

side:翔 長い…長い一週間だった。 挙げ句の果てにこんな結末が待っているなんて、誰が予想する? 愛しい大切な(ひと)が命を落としかけたなんて。 座っておけと言っても言うことを聞かず、キッチンをくるくると動き回る智は、さっきまで救急車に運ばれて点滴を受けていたとは思えない。 ぐっすり眠っていたはずの凛も目を覚まして手伝っている。 「さあ、できたよ!ずいぶんと遅くなってしまったけど…翔、お帰り!」 「おかえり!しょう!!」 「ただいま。とにかく…無事でよかった…」 「…うん、ごめん。もう、大丈夫だから。 凛もありがとうな。」 「…うん。りん、おなかすいたよぉー!」 「じゃあ、みんなで…」 「「「いただきますっ!」」」 何気ない振る舞い、空気、会話…この当たり前がすべて愛おしい。 智を失うかと思った時、冗談ではなく回りの景色が、音が消えた。 俺の全ては智なんだと、確信した。いなくなるなんて考えられない。俺の命に代えても惜しくない存在。こいつがいなくなるくらいなら俺も一緒に… 「…翔…翔?どうした?疲れたよな?」 「あ…ううん。大丈夫だ。お前が無事で本当によかった。 凛…お前もよく頑張ったな。本当にありがとう。」

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