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第411話

言いながら涙が溢れてきた。 ダメだ…涙腺が崩壊してしまった。両手で顔を覆って隠すけれど、手の隙間から流れ出る涙は隠せない。 「…ごめん、ごめんな、翔…俺はもう大丈夫だから…お医者さんも言ってただろ?大丈夫だって。 だから…泣くなよ。な?翔… びっくりしたよな?大丈夫だから…」 そう言いながら、智が俺の頭を抱きしめてきた。 凛が智の反対側から、ぎゅうっと抱きついている。 俺は右手で智の腰を 左手で凛の肩を思い切り抱き返した。 静かな部屋に、鼻をすする音と嗚咽だけが響いている。 身体全体に二人の温かな体温と大好きな体臭が伝わってきて、俺は少しずつ落ち着きを取り戻していった。 「…はぁ…っ。…ごめん。俺…すっげぇ情緒不安定だ… 智…ホントに生きてるんだよな?本物だよな?」 智は俺の両手を引き上げると自分の頬を包み、その上に手を重ね、じっと見つめて言った。 「何言ってんだよ!俺は俺っ!ちゃんと生きてるよ!しっかりしてくれよ、翔! なぁ、早く片付けて、今夜は三人で川の字になって寝よう!もう遅いし。 お前も疲れたよな?ごめんな、俺のせいで。 凛!流しに食器おろしてきて! そんで先に翔のベッドに行ってな!」 「…いいの?わかった!!」 凛が自分の食器をかちゃかちゃいわせながら片付け、一旦自分の部屋に戻りぬいぐるみを持ってきたが、智に擦り寄ると 「ねぇ、さとし。いっしょにおふろにはいろう? ゆうがた はいったけど、びょういんのにおいがするし、さとし、ひとりで はいって たおれたらこまるから、りんがみててあげる。」

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