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第419話

スタッフさんに先導されながら、凛に片手ずつ引っ張られて撮影室へ連れて行かれた。 人の良さそうなカメラマンがニコニコと待っていた。 背景を幾度か変え照明を微調整しながら何枚か撮っていく。 途中、もっとくっ付いてとか、笑ってとか、斜め45度上を見てとか、いろんな注文に応えながら、だんだん、俺達はモデルじゃないんだけどと文句の一つも言いたくなってきた。 その撮影の邪魔にならない位置で、遙さんがスナップ写真を撮ってくれていた。 場所を変え何枚も撮っていく。一体どれだけ撮ればいいんだ? 「はい、お疲れ様でした!いい写真が撮れましたよ!では後程…」 時計をチラリと見た智はぐったりと疲れた様子で 「写真はもういいよ…」 と呟いた。同感だ。 ただ凛だけはカメラ目線でにこやかに対応し、カメラマンから絶賛されていた… そろそろ… 待ちに待った時間が訪れる。 あの時、智が『うわぁ、綺麗』と呟いた、ステンドグラスから光が差し込む瞬間の美しい時間が。 わざわざ日の入りの時刻を調べて逆算し、この時間を選んだのも一生の思い出にして欲しかったから。 俺と智と凛の三人だけで、目に見えぬ荘厳で偉大なものに永遠の誓いを立てる… その時が刻々と近付いている。今までにない緊張で口の中がカラカラに乾いてきた。

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