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第431話
「女将さん自ら接客なんて…ここ、度々来てるの?
誰かと一緒に…来たことあるの?」
「『あのおっさん達』のお供でな。何度かあるよ。
恋人…いやもう妻だな…を連れて来たのは、お前が初めてだ。なんだ?ヤキモチか?」
「…そんなんじゃないけど…慣れてるから…」
「あの店を立ち上げた時から連れて来られて、かわいがってもらってるんだ。
『二人で来るときは、そいつが生涯の伴侶だ』って宣言してたから。予約の電話入れた時には、女将が受話器の向こうで叫んでたからな。
手ぐすね引いて待ってたみたいだよ。
あの様子だと…智にイチコロだったな。
あの人にとったら、俺はヤンチャな息子みたいなもんだから。」
「…そうなんだ…それにしても、すごい部屋にすごい料理だね。こんな素敵なところで過ごせるなんて…翔、ありがとう…」
突然かかってきた内線に出ると「失礼致します、ご挨拶よろしいでしょうか?」という声がした。
「はい、どうぞ。」
しばらくしてすっと襖が開いて、割烹着の男性が二人現れた。
「板長の半田と、次板の石島でございます。
本日はご来館誠にありがとうございます。我々、心を込めて作らせていただきました。お口に合えば幸いでございます。
って…久し振りだな、五十嵐君!おめでとう!
みんな大騒ぎだよ。
ほぉっ…女将の言う通り、こりゃべっぴんさんだ!
ようこそ、いらっしゃいました。
リクエストがありましたら、何でもご用意させていただきますからね、ご遠慮なく。
いやぁ。うれしいな。息子が嫁をもらったみたいで。どうぞ末永くお幸せに。」
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