484 / 516
第486話
智の肩が震え始めた。
うっ、ううっ、うっ
小さな嗚咽が漏れている。
その肩をそっと抱き寄せると、俺に身体を預けてきた。
そうか…何も言わない俺に、今までどこかしら不安に思って我慢してたのか。
だから箍が外れると、ちゃんとした言葉を欲しがったり、自己否定するようなことを言ってたのか。
どんなに愛の言葉をささやいても、智にとってそれは一時的なものに過ぎなかったのか。
控えめで優しくて、聡い俺の嫁。
静かに泣き続ける智の体勢を変えて、向かい合わせに抱っこする。
俺の首にぎゅっと抱きつく智の頭を撫で、背中をさすり続ける。
耳元でささやく。
「俺の言葉が足りないせいで、不安な気持ちにさせて悪かった。
でも、俺はいつだってお前のことを大切に、愛おしく思ってるんだぜ。
それは忘れないでほしい。嘘偽りのない俺の気持ちだから。
俺と本当の家族になって下さい。
智…愛してるよ。」
こくこくと頷いて、智がしゃくり上げながら子供のように声を上げて泣き出した。
少し身体を離して、ぽろぽろと溢れ出る涙を舌先で掬い取る。舐めても舐めても溢れ出る涙。
目尻にキスをして『愛してる』とささやき続ける。
溢れて留まるところのないこの愛おしい想い。
お前の気持ちに気付かなくてごめん。
きちんと伝えてなくてごめん。
お前を…愛し過ぎてごめん。
ともだちにシェアしよう!