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第488話
しばらくすると俺のリクエスト通り、野菜がたっぷり、おまけに魚介類もたっぷりの鍋がぐつぐつといい匂いをさせていた。
「うっわー!えびでっかーい!かにもはいってるぅ!!このかい すごぉーーい!」
凛のテンションもMAXだ。
「さぁ、思う存分召し上がれ。」
「「「いっただきまーーす!!」」」
あー、至福!極楽!
俺も凛も無言で箸を動かし、鍋と取り皿を何度も往復させる。
そんな俺達の様子を満足気な笑みを浮かべて翔が見ている。
「翔?お前も早く食べろよ!美味いぞっ。ありがとう。
なぁ。ぼーっとしてると凛に全部食われちまうよ。」
「だってぇー。りんがすきなものばっかりだもん。
しょう、おいしいよ!」
翔はただ、うんうんと満面の笑みを崩さずに、時々自分も食べ、ほとんど俺達の皿につぎ分けていく。
不思議に思い
「翔?具合でも悪いのか?どうした?箸進んでないぞ。」
「いや、大丈夫だ。
…お前達の食べる顔見てたら、マジ幸せで胸が一杯になって…食えなくなった。
こんな光景がこの先ずっと続くなんて…
俺は、俺は……」
口をつぐんだ翔の目からポロリと一筋の涙が溢れた。その後の涙を堪えるように俯き、肩を震わせている。
俺は席を立つとそっと翔を抱きしめた。
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