496 / 516

第498話

目を覚ますと、目の前に大好きな男の顔が心配そうに見つめていた。 「大丈夫か?」 「ん。大丈夫。」 すりっと猫のように甘えてその逞しい胸に擦りつくと、頭を抱えて抱きしめてくれた。 「お前を抱くと、優しくしたいのにセーブできない。ごめん、智。」 首を横に振って 「それでいいんだ。愛してくれたら。それで。」 顎を持ち上げられてキス。 ちゅっ と大きな音を立てて離れていく唇を追いかけて、俺からキス。 ちゅっちゅっと啄ばむようなキスを繰り返すと 「風呂入ろうか。俺が洗ってやるから。」 俺にしては珍しく、優しい夫の甘い申し出を素直に受け入れた。 ふわりと抱き上げられて彼の首に両手を回し寄り掛かかる。 熱いシャワーを当てられ、恭しく割れ物を扱うごとく洗っていく翔の仕草がおかしくて、つい吹き出すと 「何がおかしいの?」 と、途端に膨れっ面になるから、その鼻を摘んで 「大切に扱い過ぎる。」 と言うと 「大切なんだから仕方がない。」 と、今まで以上に丁寧に擦られ、撫でられて… 「もういいよ。自分でするから。」 わざとつっけんどんな言い方をしてスポンジを奪い取ると、また火がつきそうになる身体に気付かぬフリをして洗う。

ともだちにシェアしよう!