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第502話

一頻り話に花が咲いた後、課長がこっそりと 「やっとこれで正式な夫夫になれるな…。俺達は長い間待ったけど、その分うれしさが増してるよ。 恥ずかしながら昨日、二人で泣いちまったんだ。 いくら養子縁組で家族とはいえ、やはり夫夫と親子は違うんだよな。 たかが紙切れ一枚でもその重みが違うんだ。 本当に…よかったな。」 内緒話のようにささやいて、肩を叩いて席にもどっていった。 俺達のような関係の人間が皆んな待ち望んでいた。 これで世間にも堂々と遠慮なく『伴侶』だと、『家族』だと胸を張って言える。 課長や瑞季君の喜ぶ顔を見て、やっとその実感が湧いてきた。 翔は…一体何者なんだろう。 表向きあいつは料理人だけど、それ以上の深い別の仕事を持ってる? いや、それはもうどうでもいい。俺は『五十嵐翔』という一人の男を愛してるだけだ。 今週の仕事が始まったばかりなのに、もう家に帰りたくて、翔に会って抱きしめられたくて身体が疼く。 俺の身体、どうしたんだ? 発情期の猫のように、翔に甘えたくて仕方がない。 身体の熱が上がってくるような気がする。 ダメだダメだ。頭を切り替えて仕事モードにしなければ。 ふるっと頭を振ると、パソコンを立ち上げて無理矢理仕事に集中した。

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