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番外編:バレンタイン・キッス①

仕事で明日まで帰ってこない翔の代わりに何か買って帰ろうと、デパ地下の惣菜売り場を着飾ったオバサマ達に紛れてウロウロしていた。 凛が好きそうなものを適当に選び、愛想の良い売り子のオバちゃんにオマケしてもらい、ホクホク顔で歩いていると、華やかな紙袋を持った女性達がやたら多い気がする。 何か世間が騒がしいと思ったら…一大イベントが近付いていたのか。 好奇心が勝って、特設場を覗いてみた。 目立つでっかい真っ赤なリボンと甘ったるい看板。 群がる女達の顔が獲物を狙うハイエナにしか見えないのは俺だけか? あー、アイツに何かあげたら喜ぶかなー… 瞬間、翔のうれしそうな顔が浮かんだ。 …が。 中へ入れない! あのハイエナの群れに飛び込んでいく勇気はない。さっきからチラチラと『場違いな奴は来るな』的オーラを放たれているような気がする。 そうだ!市販のものでケーキを作ろう! 俺はまた地下に戻って特売になっていた材料を手当たり次第買い込んだ。 戦利品を手に凛のお迎えに行く。 帰り道… 「ねぇねぇ、さとしー。しょうに、ちょこれーとあげないのー?」 「おっ、御多分に洩れずお前も世間の流行に乗るタイプか? 誰かあげたい奴でもいるのか?」 「えー?いないよー。あんなこどもっぽい がきんちょたちはおことわり。」 「うわっ。相変わらず辛辣なコメントどうもありがとう。 翔には、材料は市販のものばかりで悪いけどケーキ作ろうと思ってるんだ。 凛、手伝ってくれる?」

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