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番外編:バレンタイン・キッス④
「そうか、よかった。
おい、凛。お前、それ一人で食べるのか?」
「うん!これは べつばらだよ!
おいしいからぜーんぶたべれちゃう。ふふっ。
あ、ちゃんとはみがきするからだいじょうぶだよ!」
あっという間にぺろりと平らげた凛は、ご馳走様と言い残し、洗面所へ行ってしまった。
ちょうどタイミングが合ったのだろう、風呂から上がった翔と何か話しているのか笑い声が聞こえてきた。
そのうちパタパタと駆けてきて、いつものお休みのちゅーをせがんで
「さとし、おいしかったよ、ありがとう。おやすみなさい。
それと…はっぴーばれんたいん!」
ぱちんと意味深にウインクをして、さっさと自分の部屋へ入ってしまった。
相変わらずオマセなお嬢だな。一晩ぶりの俺達を気遣って二人きりにしてくれたんだろう。
それはそうと…これ、ホントに喜んでくれるんだろうか…
「智…ありがとな。ゆっくり入らせてもらったよ。
あー…早く抱きしめて眠りたい…」
ふわりとシャンプーの香りがして、後ろから抱きしめられ、思わず身体がふるりと震えた。
動揺を隠しながら小さな箱を取り出した。
「翔…これ…美味しいチョコレート買い損ねて…全部出来合いのもので ごめん…凛に手伝ってもらって作ったんだけど…
塗るのって結構な難しいんだな。
あ、形は不細工だけど、愛情はたっぷりだからな。」
「えっ?智が?俺のために?すっげぇうれしい!
開けていい?
うわっ!ハートじゃん!いっただきまーす!
うん!美味いよ!…ありがとう…智…」
ちゅっ
甘い、甘いキス。
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