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第2話 図書委員

新しいクラスの教室は、朝から騒がしかった。  久しぶりに会う友達と笑い合う声。  どこのクラスになったのか、誰と一緒になったのか。  そんな話題で、あちこちに人の輪ができていた。  俺は教室の後ろの席に座り、配られたばかりのプリントを眺めていた。  高校二年生。  新しい一年が始まった。  黒板の横に貼られた座席表を見たとき、俺は思わず小さく息を吐いた。  相良とは、別のクラス。  それだけのことだったけど、胸の奥に張り詰めていたものが、ほんの少しだけ緩んだ気がした。  ずっと相良の顔色を窺わなくてもいい。  休み時間に、相良の機嫌を損ねないように立ち回らなくてもいい。  少なくとも、教室にいる間だけは。  そう思ったら、少しだけ呼吸がしやすくなった。  もちろん、放課後になれば一緒に帰る。  屋敷に戻れば、いつもの生活が待っている。  それでも。  この数時間だけは、相良の視線から離れられる。  俺はプリントの端を指先でそっと撫でた。        * 「じゃあ、図書委員を決めるぞー」  ホームルームの終わり際、担任が教卓の前で声を上げた。  教室のあちこちから、面倒くさそうな声が漏れる。 「誰かやりたい人いるか?」  しばらく沈黙が続いた。  俺は俯いたまま、机の上のプリントを見つめていた。  委員会活動は、できれば避けたかった。  余計な仕事が増えれば、それだけ相良に帰りが遅いと説明しなければならなくなる。  けれど、断る理由を聞かれても、うまく答えられない。  誰かと一緒に活動するのも、得意ではなかった。  どう振る舞えばいいのか、わからないから。 「俺、やりますよ」  明るい声が教室に響いた。  顔を上げると、窓際の席に座っていた男子が手を挙げていた。  橘海都。  彼は去年もすごく目立っている生徒だった。  よく女子に囲まれているところを見かけたし、男子とも分け隔てなく話していた。  明るくて、誰にでも気さくで。  先生からの評判もいいらしい。  いわゆる、クラスの中心にいるような人気者。 「お、橘か。助かるな。もう一人、誰かいないか?」  教室を見回す担任の視線が、俺のところで止まった。 「及川はどうだ?」 「……え?」 「図書委員。やってみないか?」  断ろうと思った。  でも、すぐには言葉が出てこなかった。  担任は俺の返事を待っている。  周りの生徒も、何人かこちらを見ていた。  断ったら、理由を聞かれるかもしれない。  そう考えた瞬間、口が勝手に動いた。 「……や、やります」 「よし、決まりだな。橘、及川。よろしく頼むぞ」 「はーい」  海都が軽く手を挙げた。  その声につられるように、周りの生徒たちもまた話し始める。  俺は机の下で、そっと指を握り込んだ。  また、余計なことを引き受けてしまった。  そう思う一方で、少しだけ気になっていた。  橘海都。  あまり話したことのない相手と、二人で委員会活動。  うまくできるだろうか。  相手を怒らせたり、迷惑をかけたりしないだろうか。        * 「及川!」  ホームルームが終わり、教科書を鞄にしまっていたときだった。  突然、名前を呼ばれた。  肩が跳ねる。  振り向くと、海都がこちらに歩いてきていた。 「図書委員、一緒になったな。よろしく!」  人懐っこい笑顔だった。  俺は一瞬、どう返事をすればいいのかわからなくなった。 「あ……うん。よろしく」 「及川って、隼って名前だよな?」 「……そうだけど」 「じゃあ、隼って呼んでもいい?」 「えっ」  思わず、声が裏返った。  名前で呼ぶ。  それは、俺にとって少し不思議なことだった。  相良は、俺のことを名前で呼ぶ。  けれど、それは優しく呼びかけるためじゃない。  命令するときも、怒鳴るときも、俺を傷つけるときも。  相良の声には、いつだって逆らえない何かがあった。  だから、こんなふうに何の気負いもなく名前を呼ばれると、どう反応していいのかわからない。 「……別に、いいけど」 「よっしゃ。じゃあ俺のことも海都でいいから」 「え、いや……橘くん、で……」 「なんでだよ。堅いなあ!」  海都は声を上げて笑った。  その瞬間、近くにいた男子が話しかけてきた。 「海都、昼どうする?」 「お、あとで行く! 先に席取っといて!」 「了解ー!」  男子は手を振って離れていった。  続いて、女子が海都の肩を軽く叩く。 「海都、今日の放課後って空いてる?」 「ごめん、今日は委員会! また今度な」 「えー、残念!」  そんなやり取りが、ごく自然に続いていく。  海都の周りには、いつも誰かがいる。  彼はその一人ひとりに笑顔を向けて、相手の話を聞いて、当たり前のように会話を続けていた。  俺には、できないことだった。  誰かに話しかけるだけでも、何を言えばいいのか考えてしまう。  相手が不機嫌にならないか。  余計なことを言っていないか。  自分の言葉で、誰かを怒らせてしまわないか。  そうやって考えているうちに、結局何も話せなくなる。 「……隼?」 「っ、はい!」  海都が不思議そうに俺を見ていた。 「いや、そんなかしこまらなくていいって」 「あ……ごめん」 「だから、謝んなくていいって!」  海都はまた笑った。  怒っている様子は、少しもなかった。  俺は戸惑いながら、その顔を見つめた。  こんなふうに笑う人がいるんだ。  そんなことを、なぜか思った。      *  放課後。  俺たちは、教室に置くための本を選びに図書室へ向かった。 「いやー、図書委員って何すんのかと思ったけど、意外と楽しそうだな」  海都は廊下を歩きながら、気軽に話しかけてくる。 「本、好きなの?」 「うん。まあ、読むのも好きだし。こういうの選ぶのも面白そうじゃん。隼は?」 「……俺は、普通」 「普通って何だよ。好きでも嫌いでもない感じ?」 「……うん」  本当は、嫌いではなかった。  昔は、よく本を読んでいた。  現実から少しだけ離れられる気がしたから。  物語の中では、自分の行きたい場所へ行ける。  誰かに命令されることもなく、自分の言葉で話すことができる。  けれど、堤家に来てからは、そういう時間も少なくなってしまった。  そんなことを話すつもりはなかったので、俺は曖昧に頷くだけにした。 「そっか。じゃ、いろいろ見てみようぜ」  図書室に入ると、紙の匂いがした。  静かな空間。  整然と並んだ本棚。  窓から差し込む春の心地いい日差し。  教室とは違って、ここには大きな声も、誰かの笑い声もなかった。  少しだけ、落ち着く。 「じゃあ、教室に置く本、何冊か選んでくるか。俺、こっち見るから、隼はあっちお願いしていい?」 「……うん」  俺は奥の本棚へ向かった。  棚には、さまざまなジャンルの本が並んでいた。  小説、エッセイ、図鑑。  背表紙を眺めながら、教室に置くならどんな本がいいだろうと考える。  上の段に、目に留まった本があった。  少し古い、美しい風景写真が載っている本だった。  手を伸ばす。  あと少し。  指先が背表紙に触れたところで、袖口がずり落ちた。 「……あ」  慌てて本を引き抜く。  その拍子に、シャツの袖が手首までずり上がった。  赤紫色の痣が、露わになる。  しまった。  そう思ったときには、もう遅かった。 「隼?」  背後から、海都の声がした。  俺は反射的に袖を引き下げた。 「な、何?」  振り返る。  海都は、さっきまでの明るい笑顔を少しだけ消していた。  その視線が、俺の手首に向けられている。 「……それ、どうした?」  心臓が跳ねた。 「え?」 「手首。痣、あるだろ」  どうしよう。  見られた。  見られてしまった。  頭の中が、急に騒がしくなる。  誰にも見られないようにしていたのに。  もし、海都が先生に話したら。  もし、相良の耳に入ったら。  もし、俺が余計なことを話したせいで、相良が――。 「……転んで」  気づけば、そんな言葉が口から出ていた。 「転んだ?」 「う、うん。ちょっと、階段で……」  自分でも、苦しい言い訳だと思った。  転んだだけで、こんなふうに手首が痣だらけになるだろうか。  海都も、きっとそう思ったはずだった。  彼はすぐには何も言わなかった。  ただ、俺の顔をじっと見ていた。  その目には、疑うような色はなかったけど、代わりに、何かを心配しているような。それが、かえって怖かった。 「……そっか」  やがて、海都は静かに頷いた。 「痛くない?」 「……大丈夫」 「なら、いいけど」  海都は、それ以上聞かなかった。  どうして痣があるのか。  本当に転んだだけなのか。  誰かにやられたんじゃないのか。  そういうことを、一つも聞かなかった。  俺は俯いたまま、袖口を握りしめていた。  何も聞かれないことに、ほっとした。  でも同時に、胸の奥が少しだけ痛んだ。  もし、本当のことを聞かれたら。  俺は、何と答えるつもりだったんだろう。  助けて、と。  誰かに、そう言いたかったんだろうか。 「なあ、隼」  海都が、いつもの調子に戻った声で言った。 「俺たち、知り合ったばっかだけどさ」 「……うん」 「こうして委員も一緒になったのも、何かの縁だし」  海都は少し照れたように笑った。 「困ってることとかあったら、言えよ」  俺は顔を上げた。 「……え?」 「いや、何でもいいんだよ。本のことでも、学校のことでも。俺にできることなら手伝うし」  彼は、特別なことを言っているつもりはないのだろう。  友達に向ける、ごく普通の言葉。  誰にでも言えるような、何気ない言葉。  それなのに。  俺は、すぐに返事ができなかった。  困っていることなら、いくらでもある。  助けてほしいことだって、きっと数えきれないほどある。  けれど、そんなことを誰かに言ったことはなかった。  言っても、どうにもならないと思っていたから。  それに、相良はいつも言っていた。  俺を愛してくれる人間なんていない。  俺のことをわかってくれる人間なんていない。  俺には、相良しかいない。  だから。 「……ありがとう」  ようやく出てきた言葉は、それだけだった。  海都は一瞬きょとんとしたあと、ふっと笑った。 「おう!」  その笑顔を見たとき、胸の奥がじんわりと温かくなった。  たった一言。  困ったら言えよ。  それだけの言葉なのに。  俺は、こんなふうに誰かに気遣ってもらったことが、いつ以来なのか思い出せなかった。  そして、思ってしまった。  ――もう少しだけ。  もう少しだけ、この人と話してみたい。  そんな気持ちが、自分の中に生まれていた。      *  その日の放課後。俺は校門の前で相良を待っていた。  空は薄いオレンジ色に染まり始めている。  風が吹くたび、街路樹の若葉が揺れた。  四、五人の高校生のグループが、こちらへ歩いてくる。  その中心にいたのは、見覚えのある顔だった。 海都。  友達らしい男子や女子に囲まれて、楽しそうに話していた。  俺に気づくと、海都はぱっと顔を明るくした。 「お、隼!」  名前を呼ばれた。  思わず顔を上げる。 「また明日なー」  海都は、いつもの笑顔で手を振ってきた。  ほんの少しの迷いもない。  俺を見つけたことが、ただ嬉しいとでもいうように。  胸が、どきりとした。  どうしよう。  相良以外の人と話してはいけない。  相良との決まりが、頭の中を駆け巡る。  でも。  海都は、俺に手を振ってくれている。  無視するのも、変だと思った。  それに、さっき嬉しい言葉をかけてくれた海都を無視なんてできなかった俺は、小さく手を上げた。 「……うん。バイバイ」  ほんの一瞬。  海都の顔が、もっと嬉しそうに笑った。  そのまま、海都たちは通り過ぎていった。  友達の一人が何かを言い、海都が笑う声が聞こえる。  その声は、すぐに遠ざかっていった。  俺は、上げていた手をゆっくり下ろした。  たったそれだけのことだった。  クラスメートに挨拶をした。  相手が手を振ってきたから、振り返した。  それだけ。  何も悪いことなんてしていない。  ……はずだった。 「隼」  隣から、低い声がした。  心臓が跳ねた。相良。いつからそこにいた? 「……はい」 「今の、誰?」  わかっているはずなのに。  俺は唇を湿らせた。 「……同じクラスの、橘くん。図書委員が一緒で……」 「へえ」  相良が足を止めた。  俺も、慌てて立ち止まる。 「図書委員?」 「……うん。今日、決まって」 「ふうん。お前に話しかけてくるなんて変わり者だな」  相良は笑っていた。 うん、そうだね…としか言えない俺は黙って相良の後につづき帰路についた。 その日の夕食の時間だった。  目の前には、温かい料理が並んでいる。  もう何度も繰り返してきた、いつもと変わらない食事の時間。  ただ一つ違うのは、相良の機嫌が放課後からずっと悪いことだった。 「……いつの間に そんなに仲良くなったわけ?」  椅子に座った相良が、唐突に言った。 「仲良くっていうか…図書委員が一緒になっただけだよ」 「俺には、随分楽しそうに見えたけど」 「……そんなこと」 「じゃあ、何で笑ってたんだよ」  答えられなかった。  海都に挨拶をされたとき、少しだけ嬉しかった。  その気持ちを、どう説明すればいいのかわからなかった。  何より、それを相良に知られることが怖かった。 「……ごめん」  口から出たのは、いつもの言葉だった。  相良の目が細くなる。 「だから、何で謝ってんの?」 「……っ」 「お前さ」  相良の声がだんだん荒々しくなる。 「俺といるとき、そんな顔したことあった?」  怖い。怖くてたまらない。  何を言えばいいのかわからない。  そんな顔。  どんな顔だろう。  海都の前で、自分がどんな顔をしていたのか。  俺には、よくわからなかった。  ただ、相良の前では、いつも怒らせないことばかり考えている。  海都の前では、少しだけ、それを忘れていた。  それが、いけなかったのだろうか。 「……ごめんなさい」 「……チッ」  舌打ち。  それだけで、背中が冷たくなる。  次の瞬間。  ガシャンッ、と大きな音がした。 「……っ!」  皿が床に叩きつけられた。  料理が飛び散り、白いご飯が床を転がる。スープが広がり、温かかったはずの食事が、無残に床へぶちまけられた。  俺はその場で固まった。  何が起きたのか、理解するより先に、身体が震え始める。 「食えよ」 「……え?」 「聞こえなかったか?」  相良は頬杖をつき、床に散らばった料理を指差した。 「犬みたいに這いつくばって食えよ。三分以内にな」  頭の中が、真っ白になった。  床に落ちたご飯。飛び散ったおかず。  そのすぐそばで、不敵な笑みを浮かべながら俺を見ている相良。  冗談だと思いたかった。  けれど、相良の目は少しも笑っていなかった。 「……でも、これ……」  口から、かすれた声が漏れた。  言った瞬間、しまったと思った。  相良の表情から、笑みが消えた。 「俺の命令がきけないってのか?」 その言葉だけで、身体が強張った。  俺はゆっくりと床に膝をつき、そして手をつく。  視線を落とし、床に散らばった料理を見つめる。  喉の奥が詰まって、うまく息ができない。  嫌だ。  食べたくない。  どうして、こんなことをしなければいけないんだろう。  そんな気持ちが、胸の奥で小さく渦巻いた。  けれど、すぐに別の考えが浮かんでくる。  逆らったら、どうなる?  もっと怒らせたら?  昨日みたいに縛られてサンドバッグだ。  考えるだけで、手が震えた。 「……っ、いただきます」  誰に向けた言葉なのか、自分でもわからなかった。  俺は床に落ちたご飯を口で拾う。  冷たい。  さっきまで温かかったはずなのに。  口の中に入れても、味がよくわからなかった。  ただ、食べなければいけない。  三分以内に。  相良の命令だから。  俺は床に手をついたまま、散らばった料理を口に運び続けた。  指先が震える。  目の奥が熱くなる。  それでも、顔を上げることはできなかった。 「ははっ……」  頭上から、笑い声が聞こえた。 「マジで食ってんの?」  相良だった。  俺は動きを止めそうになったが、すぐに手を動かした。  止まったら、また怒られる。 相良が近づいてくるのを気配で感じた。靴音が、俺のすぐそばで止まる。  俺が顔を上げるより早く、相良の足が伸びてきた。 「……うっ!」  頬に、靴底が押しつけられた。  床に手をついた姿勢のまま、顔を踏まれる。  痛みと驚きで、息が詰まった。  身体が傾き、頬が床に押しつけられる。  その拍子に、口元についていた食べかすが頬に広がった。 「……っ、さが、ら……」 相良は足をどけなかった。  むしろ、俺の顔を見下ろして、楽しそうに笑った。 「お前、今自分がどんな顔してるか分かってる?」  俺は答えられなかった。  頬が痛い。  床が冷たい。  口の端には、食事の汚れがついている。  惨めで、恥ずかしくて、今すぐここから消えてしまいたかった。  けれど、動けない。 「ははっ、ひでぇ顔」  相良は腹を抱えるようにして笑っている。 「お前、ほんっと犬みたいだな」  その言葉が、耳の奥に刺さった。  犬。  俺は人間、なのに。 「……ほら、まだ残ってんぞ」 残ったご飯を口に運ぶ。  喉が詰まりそうになっても、必死に飲み込んだ。  大部分を食べ終わると、相良が満足したように息を吐いた。 「片づけとけよ」 「……はい」 「床もな。汚ねぇから」  俺は床に膝をついたまま、俯いていた。  顔を上げる勇気がなかった。 「返事」 「……はい」  相良はそれ以上何も言わず、部屋を出ていった。  扉が閉まる音がした。  足音が遠ざかっていく。  それを聞いても、俺はしばらく動けなかった。  やがて、ゆっくりと顔を上げる。  誰もいない部屋。  床に残った汚れ。  ひりつく頬。  俺は唇をぎゅっと結んだ。  「……なんで」  声が震えた。  誰にも聞かれない、小さな声だった。 「……なんで、俺……」  続きを言おうとして、言葉が詰まった。  どうして、こんな目に遭わなければいけないんだろう。  どうして、嫌だと言えないんだろう。  どうして、逃げられないんだろう。  答えなんて、どこにもなかった。  俺は溢れ出る感情をなんとか押し殺し、散らばった食器を拾い始めた。  さっきまで温かかった胸の奥が、少しずつ冷えていく。  海都と話せたこと。  優しい言葉をかけてもらえたこと。  また明日、と笑ってくれたこと。  その全部が、遠くなっていく。   ――明日は、海都に話しかけないほうがいい。  そう思った。  そうすれば、相良を怒らせずに済む。  せっかく少しだけ嬉しいと思えた気持ちも、なかったことにしてしまえばいい。  俺は俯いて、足元だけを見つめた。  けれど、胸の奥には、まだ小さな温かさが残っていた。  誰かに心配してもらえたこと。  困ったら頼っていいと、言ってもらえたこと。  それを、忘れたくないと思ってしまった。  たとえ、相良が許さなくても。

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