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第7話 最高傑作の君の正体

───海外出張から数日後。 プロジェクトの完遂を祝うオフィスは、大きな達成感と安堵の空気に包まれていた。 だが、その中心にいるべき人間は、どこにもいない。 「あれ、筒香くん今日も休み?」 「ああ、海外出張の後からずっと休んでるよ。まあ、あいつ普段からギリギリの状態で仕事してたし、あの規模のプロジェクトのプレッシャーで一気に糸が切れちまったんだろ」 「それもそうか、まあリフレッシュは大事だよな」 同僚たちが呑気にそんな話を交わす中、自分のデスクに座る鳳の心臓は、激しい焦りと不安で早鐘を打っていた。 (帰国してから連絡がつかない……。電話もメッセージも既読すらつかない。本当に会社を休んで休養しているのか……? ) ——あの夜のホテルの記憶が、鳳の脳裏で生々しく蘇る。 あの夜、力尽き眠る筒香の額にそっと唇を寄せ、ベッドから抜け出した鳳が向かったのは、床に転がっていた筒香のノートパソコンだった。 あの画面に躍っていた、自社システムを内部から徹底的に破壊するような恐ろしいコードの数々。 (……まさか、筒香はハッカー?……企業スパイなのか……!?) 更にその真実を突き止めようとデータを安全な外部ストレージへ退避させようとしたその瞬間だった。 パチッ、と画面が不気味な明滅を繰り返す。 (……っ! なんだ……!?) キーボードに触れてもいないのに、画面上のコードやログが、まるで生き物のように猛烈なスピードで自動的に書き換えられ、次々と消去されていく。 鳳が慌ててバックアップを取ろうとキーを叩いたが、すでに手遅れだった。 ファイルの本体は跡形もなく消え去り、画面に残されたのは、冷酷なまでの「アクセス完了」のログと、遠隔操作を仕掛けた"謎の外部IPアドレスの痕跡"だけだった。 (……誰かがリモートでデータを消した……!? 筒香以外の第三者が、このタイミングで……!?) 筒香が眠っている間に、彼の端末を監視し、証拠を完全に隠滅した「別の誰か」が確実に存在している───。 あの時、そう確信した鳳は、血走った目で自分の端末のモニターを睨みつけていた。 あの夜にキャッチして保存しておいた「外部からの不審なアクセス通信ログ」。 そのIPアドレスを逆引きし、幾重にも張りめぐらせたファイアウォールを執念で突破していく。 気の遠くなるような試行錯誤の解析の末、画面の向こうにある一つの巨大な影が浮かび上がった。 「……白洲ファンド…?」

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